~早稲田大学會津八一記念博物館所蔵「富岡重憲コレクション」から~
本年、開館15周年を迎えた齋田記念館では、これを記念し、実業家・富岡重憲(1896~1979)氏の茶道具をご紹介する特別展を開催します。
日本重化学工業株式会社の創業者・富岡重憲氏は、日本の地熱開発事業の先駆者として合金鉄工業の発展に尽力するかたわら、書道や茶道にも通じた文人でした。昭和20年代に伊万里の色絵鉢から美術品の蒐集を始めたといわれ、以来半生をかけたコレクションの数は約900件に上ります。それらは、東京・大森の富岡氏の居宅を改造した財団法人富岡美術館で20年以上公開されていましたが、同館が2003年に惜しまれつつ閉館し、現在は早稲田大学會津八一記念博物館に収められています。富岡コレクションの中核をなす鑑賞陶磁と白隠などの近世禅書画はつとに著名ですが、本展では、氏の茶心が集約された名碗と大徳寺派の墨跡を中心に展観します。
また、この度の調査で、珠光在印「達磨図」が同コレクションに収められている事が判明しました。珠光の落款、印章のある絵画は他に三点が知られますが、本図は、昭和11(1936)年創元社刊『茶道全集』に東京・有尾佐治氏蔵として紹介されて以来、77年を経て公開されることになります。茶人珠光と画人珠光が同一人物であるかを検証する一助として、この機会に是非ご覧下さい。